ホルモン補充療法はホルモンが出なくなったために起こる症状や病気を改善させるために用います。一般的に卵胞ホルモン (E) と黄体ホルモン (P) を併せて用います。ホルモンの効果としては卵胞ホルモンだけでも良いのですが、単独だと子宮体がんのリスクを上昇させてしまうので、体がんのリスクを減らすために黄体ホルモンを加えているのです。
ところがE+Pで投与すると乳がんのリスクが僅かですが増加してしまいます。そこで子宮筋腫などの病気で子宮を摘出している女性にはEを単独で用いるようにしています。
●ホルモン補充療法の効果
・更年期障害の改善には即効性と確実な効果が期待できます。
・軽度の骨粗鬆症やその予備軍では骨を強くする効果が期待できます。
・生殖器 (外陰部や膣など) の萎縮を防ぐことができます。性交痛などがある場合にも有効です。
●何歳まで使えますか。
はっきりした決まりがあるわけではありませんが、およそ55~60歳程度までとするのが一般的です。ただし、症状があってつらい場合には60歳を超えても使用することがあります。症状と副作用の比較で判断するのが良いと思います。
●どのような剤形がありますか。
一番多く使われているのはやはり飲み薬 (経口剤) です。米国には卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合されたプレンプロという薬剤がありますが、日本にはないのでそれぞれの薬剤を別に服用することになります。一部、中用量ピルが使われることもあります。
次に貼り薬 (貼付剤) です。これには卵胞ホルモンだけのものと黄体ホルモンとの合剤とがあります。皮膚がかぶれやすい方には向きません。Eだけのものは1日おき、E+Pのものは週2回の貼付となります。
最後に塗り薬 (ジェル剤) です。皮膚に塗って使う薬剤で、毎日塗る薬剤です。
経口剤は貼付剤やジェル剤と比べるとわずかに肝障害が起こる可能性が高いのですが、頻度は少ないので、現在肝機能が低下している場合を除き選択肢から外す必要はないでしょう。
●がんのリスクは高いのですか。
乳がんのリスクはE+Pの投与によりわずかに増加します。10000人の女性に乳がんが発症する頻度が33人⇒41人に増加したというデータが出ています。ですからE+Pの投与を受けている方は確実に乳がん検診を受けるようにする必要があります。
一方で、E単独の投与では乳がんのリスクは増えない、もしくはわずかに減少するということが分かっています。
子宮体がんのリスクはE+Pで少し減少しますが、E単独では上昇します。子宮のある方とない方ではホルモン補充の仕方が異なるのは以上のような理由からです。
●ほかに副作用はありますか。
薬剤である以上、わずかながら肝障害の起こる可能性があります。皮膚から吸収される貼付剤やジェル剤の方が若干少なくなることが分かっています。
もう一つは血栓塞栓症です。下肢の静脈などに血栓ができる可能性が少しだけ増えます。これは主に卵胞ホルモンによるとされています。血栓がはがれて流れて行ってしまうと、重要な臓器の血管に詰まってしまうことが起こります。完全に血管がふさがってしまうと生命にかかわりますので注意が必要です。予防法などについてはLEPの項を参照してください。