●子宮筋腫ってどんな病気ですか

子宮筋腫は最も多く遭遇する婦人科領域の良性腫瘍です。ごく小さなものも含めれば、およそ3~4人に一人の女性が持っていると言われています。できる場所や大きさによって症状は異なりますが、過多月経、月経痛、頻尿、腹部膨満感、腰痛等がみられることが多いようです。女性ホルモン(卵胞ホルモン) に依存して発育するため、閉経後は発育せずに次第に縮小します。
サイズが大きくなく、症状が強くなければ原則として経過観察でよい場合が多いのですが、経過観察中に大きくなったり、症状が強くなったために治療が必要になることもあります。急に増大した場合には子宮肉腫という悪性腫瘍であることもありますので、手術治療を選択する対象となります。

●診断法にはどんなものがあるのですか

確実な診断は手術標本の病理学的検査により行われますが、通常は画像検査によって診断が行われています。最も手軽に行えるのがエコー検査です。身体に対する侵襲がなく頻回の検査でも影響はありません。経膣エコーが行われることが多いのですが、大きな筋腫では経腹エコーでないと全貌がわからないこともあります。さらに質的な診断の精度を上げる場合にはMRIの検査が行われます。

●治療法にはどんなものがあるのですか

▼薬物療法
女性ホルモン (卵胞ホルモン) を下げることによって筋腫を縮小させる方法がとられます。現在、GnRH (性腺刺激ホルモン放出ホルモン) アゴニスト (同じ作用を持つ薬剤) とGnRHアンタゴニスト (作用をブロックする薬剤) の2種類があります。どちらも結果的に卵胞ホルモンを下げる働きをしますが、アゴニストは4週間ごとの注射・鼻への毎日のスプレーの2種類の投与法があります。アンタゴニストは飲み薬です。
どちらも基本的に月経を止め、閉経した状態を一時的に作り出します。そのため、更年期様の症状が出たり、骨密度の低下がみられます。この治療は6か月まででいったん終了することになっています。最大で50~60%程度にまで縮小することがありますが、治療をやめるとまた発育を開始します。この理由から根治的な治療とはなりませんが、過多月経の方の手術前の貧血改善や縮小することによる手術のやりやすさを目的として使われることがあります。また、閉経が近い方では逃げ切り療法として、縮小させて閉経に持ち込む方法として行われることもあります。
▼手術療法
根本的な治療ですが、手術をするという身体的な侵襲のある治療法です。筋腫のみを摘出する「筋腫核出術」と子宮全体を摘出する「子宮全摘術」の2通りの手術法があります。
筋腫核出術では子宮が残りますから、妊娠・出産の可能性も残ります。一方で、筋腫が再発することもあるので、根治的な手術とはなりません。また、非常に大きな筋腫が多数ある場合などでは手術時間も長くなり、出血量も多くなるため、術後の回復が遅れることもあります。
子宮全摘術では子宮を摘出するため、妊娠・出産はできませんが、再度筋腫ができることはありませんので根治的な手術といえます。以後の妊娠を希望していない方が対象となる手術です。閉経前後の方を除けば、基本的には卵巣を摘出することはないのでホルモンが出なくなるわけではありません。したがって、子宮全摘だけで更年期の症状が出るわけではありません。
▼子宮動脈塞栓療法 (当院では行っていない治療法です。)
子宮に流れ込む動脈に詰め物をして血流を止めてしまう方法です。その結果、筋腫は縮小しますが、筋腫のできている部位によって効果の程度は変わります。痛みを感じる方もいるようです。原則として以後の妊娠を希望しない方を対象とすることが多いのですが、妊娠を希望する方にも行っている施設もあります。